「法定雇用率の対象になったが、採用活動が難航している」「障害者雇用の義務違反でどのような罰則があるのか正確に知りたい」と不安を感じる人事担当の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、障害者雇用において企業に求められる法的義務と、義務違反時に発生するリスクの全体像を解説します。またペナルティを回避し、持続可能な雇用体制を構築するための対策もお伝えします。
・障害者雇用における企業の法的義務と罰則の種類
・「報告義務違反」と「法定雇用率未達成」のリスク
・ペナルティを回避する具体的な解決策
障害者雇用における罰則と4つの義務
障害者雇用の罰則とは、主に法定雇用率の未達成や報告の義務違反を犯した企業に科される納付金や行政指導のことを指します。
罰則の内容を正確に理解するためには、まず「企業が果たすべき義務」を把握する必要があります。本章では、法的に定められた基本的な義務の内容と、それに違反した際に発生するリスクの分類について整理します。
・企業には法定雇用率の達成など4つの法的義務が定められている
・義務違反のリスクは「報告義務違反」と「雇用率未達成」に大別される
事業主が果たすべき主な法的義務は4つ
障害者雇用促進法において、一定規模以上の事業主にはいくつかの義務が定められています。企業がコンプライアンスを遵守し、適切な体制構築を進めるためには、以下の基本事項を把握しておく必要があります。
- 法定雇用率の達成
従業員規模に応じて、一定割合以上の障害のある方を雇用する義務(※現行の2.5%から、2026年7月より2.7%へ引き上げ) - 障害者雇用状況の報告
毎年1回、ハローワークへ雇用状況を報告する義務 - 解雇時の届け出
障害のある方を解雇する際、ハローワークへ届け出る義務 - 合理的配慮の提供
障害のある方が働くうえで直面する障壁を取り除くための配慮を行う義務
義務違反時に発生するリスクの分類
企業がこれらの法的義務に違反した場合、事業活動に大きな影響を与えるペナルティが存在します。リスクは大きく以下の2つの軸に分類されます。
- 雇用率未達成による納付金
法定雇用率を満たしていない場合に生じる、経済的負担や企業ブランド低下などのリスクです。 - 行政指導・社名公表
法定雇用率を満たしていない場合に生じる、経済的負担や企業ブランド低下などのリスクです。
障害者雇用状況の報告義務違反による3つの罰則リスク
ペナルティの1つ目は、行政に対する報告や各種手続きを怠った場合に科される「罰金」です。ここでは、企業が守るべき報告義務と、それに違反した際のリスクについて具体的に解説します。
・毎年6月1日時点の雇用状況の報告は必須
・未提出や虚偽報告には30万円以下の罰金が科される
・解雇時の手続きを怠った場合も罰則の対象となる
罰則リスク1. ロクイチ報告(毎年6月1日時点)の未提出による罰金
一定規模以上の企業は、毎年6月1日時点の障害者雇用状況をハローワークに報告する義務があります。これは通称「ロクイチ報告」と呼ばれます。
- 提出期限の厳守
毎年7月15日が提出期限とされています。 - 罰則の対象
正当な理由なく期日までに報告書を提出しなかった場合、30万円以下の罰金の対象となります。兼任担当者の場合、他業務の繁忙を理由に提出が遅れるケースがあるため、年間の業務カレンダーに組み込むなどの体制構築が必要です。
罰則リスク2. 虚偽のロクイチ報告を行ったことによる罰金
報告書を提出した場合でも、内容に偽りがあった場合はペナルティの対象となります。
- 虚偽申告のリスク
法定雇用率の算定要件を満たしていない労働者を不正にカウントするなど、虚偽の記載をして報告した場合も30万円以下の罰金が科されます。 - 工数増加の懸念
故意でなくても、障害者手帳の有効期限切れの確認漏れなど、管理ミスによる虚偽報告が生じるリスクがあります。適切な雇用管理の仕組み化が求められます。
罰則リスク3. 解雇時の届け出義務違反による行政指導
障害のある方を解雇する場合、一般の労働者とは異なる手続き(障害者解雇届の提出)が法第81条で定められています。
- コンプライアンス上のリスク
解雇届の未提出自体に直接的な罰金規定はありませんが、ハローワークからの行政指導の対象となり得ます。また、配慮不足による不適切な解雇とみなされた場合、労働トラブルや不当解雇を巡る訴訟に発展するリスクがあるため、退職手続きにおける業務フローの徹底が必要です。
法定雇用率の未達成による罰則は3つ
ペナルティの2つ目は、法定雇用率を満たせなかった場合に発生する罰則です。経済的負担の増加だけでなく、業務工数の圧迫や企業ブランドの低下に直結する3つの罰則について具体的に解説します。
・不足人数1人につき月額5万円の納付金が徴収される
・ハローワークからの段階的な行政指導により業務的負担が増加する
・改善が見られない場合は企業名が公表され社会的信用が失墜する
罰則1. 障害者雇用納付金の徴収
法定雇用率が未達成の企業からは、障害者雇用の経済的負担を調整する目的で「障害者雇用納付金」が徴収されます。
- 徴収額は1人あたり5万円
常用労働者100人超の企業において、法定雇用率に不足する人数1人につき、月額50,000円が徴収され、1人あたり年間60万円のコスト増となります。 - マクロデータから見る実態
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の財務諸表によれば、令和5年度(2023年度)の障害者雇用納付金収入は約362億円にのぼります。多くの企業が法定雇用率の未達成により、継続的な経済的負担を負っているといえます。
参考:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)|財務諸表
罰則2. ハローワークからの行政指導、実施勧告
法定雇用率が大きく不足している企業には、ハローワークから行政指導が入ります。この指導への対応は、人事担当者にとって大きな工数負担となります。
- 雇入れ計画作成命令
ハローワークから障害者の雇入れに関する改善計画の作成を命じられる - 適正実施勧告
計画の実施状況が芳しくない場合、適正に実施するよう勧告を受ける - 特別指導
勧告後も改善が見られない場合、特別指導の対象となり、指導がさらに強化される
罰則3. 企業名の公表による社会的信用の失墜
行政指導(特別指導)を受けてもなお、改善の兆しが見られない場合の最終措置として、企業名が公表されます。
- 採用や取引への悪影響も
コンプライアンス意識が低い企業とみなされるため、一般採用市場での母集団形成への悪影響や、取引先からの評価低下など、計り知れないマイナス要因となります。
罰則を回避するには?
ペナルティを回避するには、採用と定着を計画的に進める必要がありますが、実際の現場ではさまざまな課題が発生します。ここでは、人事担当者が直面しやすい実務上の壁を3つの観点から提示します。
・自社の業務要件に合致する母集団形成は難易度が高い
・現場の受け入れ体制構築や業務の切り出しに工数がかかる
・早期離職を防ぐための定着マネジメントが人事の負担となる
採用市場における要件に合う母集団形成の難しさ
ペナルティを回避するために採用活動を開始しても、求める人材に巡り会えないケースは少なくありません。
- スキルと条件のミスマッチ
自社が切り出した業務内容(事務、軽作業、ITスキル等)と、求職者が希望する条件や保有スキルの間にミスマッチが生じやすく、歩留まりが低下します。 - 採用手法の限界
ハローワークへの求人票掲載だけでは、要件に合致する候補者からの応募を集めることが難しく、母集団形成に苦戦する企業が大半です。
社内の受け入れ体制と環境整備の壁
採用活動と並行して、社内の受け入れ体制を整える必要がありますが、ここに大きなリソースを割かれます。
- 業務の切り出し
既存の業務から、障害のある方が担いやすい業務を切り出し、マニュアル化する作業には膨大な工数がかかります。 - 現場の理解促進
配属先の部署に対して、障害特性に対する理解を深めるための研修や、サポート体制の構築を主導しなければなりません。
入社後の早期離職を防ぐ定着マネジメントの負担
採用できたとしても、定着しなければ実雇用率の算定に結びつかず、再び採用活動からやり直すことになります。
- 定期的な面談とフォロー
体調面やメンタル面の変化に気づき、業務の調整を行うための定期的な面談が必要です。 - 現場との調整役
配属先の担当者と本人の間に入り、業務上のすれ違いを解消するサポートが、人事担当者の業務を圧迫します。
【※監修者調整用(仮エピソード)】
以前ご支援したIT業界のA社は、障害者雇用に前向きな姿勢を持ちながらも、初めての障害者雇用を推進する中で「IT系の知見がある方なら現場にフィットするはず」と考え、精神障害のある方の採用を進めました。しかし、ご本人の障害への自己理解がまだ十分でなく、できる業務・できない業務の整理が難しい状態でした。
現場も受け入れ方がわからず、結果として「何をお願いすればいいかわからない」という空気が広がることに。入社からわずか2ヶ月で早期離職に至ったことで、社内に「障害者雇用は難しい」という印象を残してしまいます。
この経験からA社は、「スキルや経歴のマッチング」よりも先に、「自社の業務の棚卸しと、ご本人の特性理解」が不可欠であることを痛感されました。
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障害者雇用の罰則に関するよくある質問
Q. 法定雇用率が未達成の場合、すぐに企業名が公表されますか?
A. すぐに公表されるわけではありません。未達成の程度が著しい場合、まずはハローワークから「雇入れ計画の作成命令」などの行政指導が入ります。それに従わず、長期間にわたり改善が見られない場合に、最終的な措置として公表の対象となります。
Q. 障害者雇用納付金は「罰金」と同じ扱いですか?
A. 納付金は刑事罰としての「罰金」ではありません。障害者雇用に関する企業間の経済的負担を調整するための制度です。ただし、不足人数に応じて毎月徴収されるため、企業にとっては無視できない財務上のコストとなります。
罰則への対策は外部リソースの活用も一手
障害者雇用における法的義務を果たし、ペナルティを回避するためには、採用して終わりではなく、自社に定着して活躍できる環境を整える必要があります。
特例子会社の設立や専任部署の配置など、豊富な資金と人的リソースを投下して、採用から定着までを自社で完結できるのは、一部の企業に限られます。他業務と兼任している担当者が多い企業にとっては、自社のみで法対応と雇用管理を両立させるのは、実務上のハードルが高いという課題に直面するケースも多いのではないでしょうか。
障害者雇用の体制構築から定着までを包括的に支援するサービス「かべなし」としては、専門的な知見を持つ外部リソースの活用が、大多数の企業にとって現実的な解決策であると考えています。
「かべなし求人ナビ」が提供するワンストップ伴走支援
単なる人数の確保ではなく、企業の課題解決に直結するサポートを提供します。
- STEP1(体制構築)
既存業務のヒアリングを通じ、障害のある方が担いやすい業務の切り出し提案や、現場の環境整備をアドバイスします。 - STEP2(採用支援)
「スキル・キャリア」を重視し、業務内容と求職者の適性をすり合わせた精度の高いマッチングを行い、面接設定から同行までサポートします。 - STEP3(定着支援)
入社後の定期面談を実施し、現場で生じた定着課題の早期解決に向けたマネジメントを伴走支援します。
自社の状況に合わせた確実な体制構築を進めたい方は、ぜひお気軽に「かべなし求人ナビ」の無料相談や資料ダウンロードをご活用ください。
就労移行支援事業所の管理者経験者監修のもと、正しい法令知識と採用・定着などの実務に役立つ情報を発信中です。企業と障害のある方をつなぐ立ち位置で、双方がWin-Winとなる情報提供を心がけています。